現在、故人がお世話になった人を広く呼ぶ一般葬ではなく、身内だけで葬儀を行う家族葬を選ぶ家庭が増えています。
家族葬にする理由はさまざまですが、私は世間とは少し異なる理由で家族葬を選びました。
本記事で紹介する家族葬を選んだ理由は、次の方には共感できる内容だと思います。
- 残った遺族の人数が少ない方
- 実家で親戚付き合いが多い方
また家族葬で心配されるのが、葬儀後の人間関係の変化です。
要は、親戚やご近所との人間関係の悪化です。
この点について、私が家族葬を行ったことで実際に起こった人間関係の変化も紹介したいと思います。
これから家族葬を検討されている方に向けて。
- 家族葬を選ぶ新しい理由や目的
- 家族葬にすることによる人間関係の変化
について、私の経験を1つの参考情報にしていただければと思います。
私が家族葬を選んだ理由
私が父の葬儀を家族葬にした理由は『人間関係を断ち切るため』です。
この点について、世間一般で家族葬にする理由と比較して詳しく説明します。
世間一般で家族葬を選ぶ理由
3つの理由を挙げますが、実際に家族葬をした経験から、それに対する私の考えも述べます。
理由1:高齢になり故人の付き合いが狭くなった
高齢になるほど、
- お付き合いしていた方が先に亡くなられる
- 退職で会社関係の付き合いがなくなる
といった理由で、人間関係の幅が狭くなります。
そのため、故人の葬儀にお呼びする方が少なくなるため、家族葬で身内中心だけで葬儀を済ませることがあります。
これは自然な流れで、核家族が増えている今ではどんどん増える理由でしょう。
理由2:葬儀の費用を抑えるため
家族葬では、参列する方を限定するため、
- 小さな斎場で済ませられる
- お返しの品・お食事の量を少なくできる
といった面で費用を抑えられます。
しかし、お呼びする方が少なくなるため、お香典の収入が減ります。
そのため、家族葬といっても葬儀の費用が安くなるとは限らず、逆に高くなることもあります。
次の記事で私が行った家族葬の費用とその内訳を紹介しています。
総額162万円と高額なので、何にお金がかかるのか?と費用を抑えるポイントの参考にしてください。
家族葬にかかった費用とその内訳
理由3:落ち着いた雰囲気で葬儀ができる
一般葬では多くの参列者が来られるので、遺族はその挨拶対応などに追われ、葬儀中は忙しくなります。
当然初めて会う方もいらっしゃるので、気遣いの面でも大変です。
しかし家族葬では、参列者は身内同士やよく知った仲だけになるので、特別な気遣いはなく、落ち着いた雰囲気で故人との最期のお別れができます。
私の場合は、近い親族のみで葬儀を行ったため、非常にゆっくりした雰囲気で葬儀を行え、挨拶に追われることなく落ち着いて対応することができました。
遺族は葬儀の準備と心労で疲弊しますので、落ち着いて葬儀が行えるのは家族葬の大きなメリットと考えます。
私が家族葬を選んだ理由
既に、人間関係を断ち切るためとお話しましたが、もう少し具体的にすると次の2点です。
- 地域の慣習を断ち切るため
- 親族間の法事のやり取りを減らすため
父が亡くなってから残された家族は私と母の2人だけであり、たった2人で幅広くお付き合いを継続することが難しいという背景です。
次で詳しく説明していきます。
理由1:地域の慣習を断ち切るため
私の住んでいる地域には『一家(いっけ)』と呼ばれる集団があります。
これは歴史をさかのぼると、同じ血筋を元にしている家庭の集団のことです。
この一家という関係には慣習があり、どこかの家庭で不幸があった場合には、同じ一家に属する家族から1人ずつ葬儀のお手伝いに行くことになります。
お手伝いの内容は、葬儀の段取りや受付など様々です。
この慣習は、自宅で葬儀を行っていた昔に、料理の準備などで人手が必要だったことの名残りですが、今の時代では全て葬儀業者が担当してくれます。
そのため、声が掛かり喪家に伺っても、特別やることはありませんが、それでも集まります。
そして葬儀も通夜・告別式の2日間とも参列します。
このように、非常に時間的に拘束の強い慣習です。
そこで残った家族の私と母の2人で話し合い、この慣習を続けるのは正直辛いという意見で一致しました。
そこで家族葬を選び、一家の方を呼ばないことで『今後は一家としてのお付き合いは致しません』というメッセージを暗に伝えることにしました。
理由2:法事での親戚回りを減らす
私の実家は田舎で、古くから同じ土地に住み続ける人が多い地域にあります。
当然、私の親戚も、同じ市内か、隣の市くらいの距離で多く固まっています。
そのため、お互いの家を行き来しやすい環境もあり、法事・お彼岸・お盆・新年といった季節ごとのイベントで、多くの親戚の家に行かなければなりませんでした。
そして当然、親戚がこちらの家にも来るので、その対応もしなければなりません。
- お互いの家の行き来と自宅での対応
- 挨拶に行く上での品物の準備
毎年の季節ごとに、これらを私と母2人だけで続けるのは現実的ではありませんでした。
私と同じように、就職して実家を離れた方では正直対応できないでしょう。
そこで、全ての親戚ではなく、比較的お付き合いが少なくなってきた祖母方の親戚一同を家族葬には呼ばず、一家の場合と同じように『今後はお付き合い致しません』ということを暗に伝えることにしました。
家族葬を選ぶ理由に対する私の考え
故人と故人がお世話になった方への想いは重要だと思います。
しかし、残された遺族の今後のお付き合いを考えることも同じくらい重要だと思います。
時代が移り変わり、世代も変われば色々な変化が生まれます。
親戚含め、お付き合いする人間関係も残された家族に合わせて変化していくでしょう。
徐々に昔の親戚付き合いの深さは浅くなり、仕事などで実家の土地から離れることもあるでしょう。
このように、いずれはお付き合いが途絶えることになります。
そこで中途半端に今までの慣習を引き継ぐと、残された遺族が辛い思いをすることになります。
故人は残された遺族が辛い思いをすることは望まないでしょう。
そのため、故人が亡くなることは、今後のお付き合いの幅を見直す1つの機会だと考えます。
そのうえで、家族葬に呼ばなかったご家庭とは疎遠になるので、家族葬でお付き合いの幅を狭める1つの手段と考えて良いと思います。
家族葬による人間関係の変化
親戚・近所
家族葬では、葬儀に呼ばなかった家庭と不仲になると言われることがあります。
これは1つの事実ですが、失礼のないように家族葬の連絡をすれば避けることができます。
そこで、実際に私が家族葬を行ったことで起こった人間関係の変化を紹介します。
親戚との人間関係の変化
家族葬に呼ばなかった家庭との連絡、法事などの家庭の行き来が一切無くなりました。
なお、嫌みや苦言などを言われたわけではなく、家族葬をきっかけに自然とお付き合いが無くなった形です。
一家との人間関係の変化
親戚と同じように、従来の一家の慣習に呼ばれなくなりました。
つまり、一家としてのお付き合いが消滅しました。
父の葬儀から2週間後に訃報が回覧板で届き、亡くなったご家庭が一家の関係にあることに気づきました。
今までの慣習ならば、回覧板よりも前に、故人が亡くなった直後に、同じ一家の家には電話連絡があったはずです。
しかし、それは無く、お隣同士で普段からお付き合いのある同じ一家の家庭に聞くと、私の家以外には電話連絡があったようで、うち以外は全員喪家に集合したらしいです。
もしかしたら気遣ってくれたのかもしれませんが、いずれにせよ、従来の一家としての関係が断たれたことには変わりません。
ご近所との人間関係の変化
ご近所の人間関係の変化は一切ありませんでした。
村八分のような事態を少し恐れていましたが、それはなく安心しました。
なお、家族葬にした場合、葬儀にお呼びしなかった方の一部は自宅に弔問にお越しになられます。
つまり、葬儀には参列しませんが、故人と会う機会は弔問という形で実現できるので、よっぽどのことが無ければ村八分とはならないと思います。
しかし葬儀は地域の慣習が根強いため、ご自身の地域の雰囲気をしっかり考えて決断されるほうが良いでしょう。
まとめ
- 家族葬に呼ばなかった家庭とはお付き合いが無くなる
- 故人が亡くなることは、親戚などの人付き合いを見直す1つの機会
- 中途半端に親戚付き合いを継続すると遺族の負担が増える
- 家族葬は人付き合いの幅を狭める1つの手段
人間関係を断ち切るというのは、少し寂しい気がするかもしれません。
しかし、中途半端にお付き合いを続けると負担は増えるので、お付き合いが減り始めたご家庭との関係を見直すのは、今後の生活を考えるうえで重要です。
『今後はお付き合い致しません』と直接伝えるのは、心情的に難しいと思います。
そのため、家族葬という形を取るのは、1つの有効な手段だと思いますので、このような考え方がある、と1つの参考にしてみてください。
なお、家族葬に関して次の記事も紹介しています。
是非参考にしてみてください。
家族葬への参列の断り方のポイントとトラブル回避