会社を退職すると『国民健康保険』と『社会保険の任意継続』のどちらかを選ぶことになります。
しかし、国民健康保険と社会保険の任意継続では、
- 保険料の計算方法が異なる
- 手当や扶養家族の考え方が異なる
ため、どちらの保険が適しているか迷います。
そこで今回、各保険のメリット・デメリットを比較したうえで、
どちらの保険がお得か?のポイント
を解説します。
退職後の国民健康保険・社会保険の任意継続に向いている人
最初に結論として、
国民健康保険と社会保険の任意継続のどちらが向いているのか?
を個人の状況に合わせて整理します。
- 退職前の収入
- 家族(扶養対象がいるかどうか)
- 退職後の就職見込み
の状況によって保険の選択が変わります。
まず、各保険に向いた人の特徴を押さえておきましょう。
国民健康保険への加入が向いている人
- 前年の所得が少ない人(標準報酬月額30万以下)
- 扶養家族が少ない
- しばらく就職しない(病気やケガのため等)
- 自営業・フリーランスの道を考えている
社会保険の任意継続が向いている人
- 前年の所得が多い人(標準報酬月額30万以上)
- 扶養家族が多い
- 1~2年以内に就職し、その会社の社会保険に入る可能性が高い
この特徴からわかるように、国民健康保険に向いている人と、社会保険の任意継続に向いている人の特徴は真逆の関係です。
つまり、
- 国保のメリット=社保のデメリット
- 国保のデメリット=社保のメリット
ということです。
この関係を意識したうえで、あなたの状況と照らし合わせ各保険のメリット・デメリットを細かく見ていきましょう。
国民健康保険のメリット・デメリット
メリット
- 前年の所得に対して一定の税率のため、長期間でまとまった収入がない場合は、2年目以降の保険料が安くなる
- フリーランス・自営業の道を目指し、将来の安定収入が見込めない方に向いている
- 加入期限がない
デメリット
- 扶養家族制度がないため、社会保険に未加入の家族の保険料の支払い義務がある
- 傷病手当金・出産手当金の制度がない
- 保険料の計算方法が地方自治体によって異なる
まず、国民健康保険の特徴は、
前年の所得で保険料が決まる
という点です。
一方の社会保険の任意継続の場合は、
退職前の社会保険料と同じ金額を2年間納付
することになります。
※2年以内に就職し、会社の社会保険に加入した場合は別
もし退職後にすぐに十分な収入が得られない場合に社会保険の任意継続を選ぶと、退職前の収入を前提に保険料を納付しなければなりません。
そのため、しばらくまとまった収入がない場合は保険料が大きな負担となってしまいます。
しかし国民健康保険では、前年の収入に基づいて保険料が決まるため、退職により収入が大きく減った場合は、翌年の保険料が安くなり、経済的負担は軽減されます。
この観点から、
退職直後の収入見込みがあるかないか?
は保険を選ぶ上で非常に重要となります。
退職を機に、自営業・フリーランスを目指して、安定した収入を得られる可能性が高くない場合には、国民健康保険へ加入することが望ましいです。
なお、私は突発性難聴で右耳が聞こえなくなったことをキッカケに退職しました。
そのうえで、
- 就労可能な状態に回復できる時期が未定
- 傷病手当金で、労務不能期間の最低限の手当金がある
- 家庭には年金収入の母のみで、扶養家族が1人だけ
という理由から、国民健康保険への加入を選択しました。
しかし、実際に支払う国民健康保険料がいくらなのか?は確認しないと決断できません。
国民健康保険料は、地方自治体で計算方法が異なります。
そこで、私は市役所の窓口で保険料の概算を試算してもらいました。
自分で調べて計算するよりも相談した方が早くて確度が高いので、一度相談することをお勧めします。
なお、国民健康保険料の試算については次の記事で紹介しています。
是非参考にしてください。
国民健康保険料の確認方法
しかし、収入に柔軟な国民健康保険にもデメリットはあります。
主に
- 手当金がない(傷病手当金・出産手当金など)
- 扶養家族の制度がない
が国民健康保険のデメリットです。
これは既に触れたように、社会保険の任意継続のメリットです。
そこで社会保険の任意継続のメリット・デメリットを見てみましょう。
社会保険の任意継続のメリット・デメリット
メリット
- 保険料算出の平均報酬月額の上限が決まっている
- 税込みで30万以上の平均月額報酬の場合、保険料が安くなる(※協会・組合による)
- 扶養家族の保険料を支払う必要がない
- 各種手当金は、在職中(資格喪失前)に支給資格があれば利用可能
デメリット
- 資格喪失日(退職日)の所得にもとづいた保険料を2年間納付
- 加入期限は2年間限定で、それ以降は国民健康保険へ移行
- 保険料を1日でも滞納すれば、資格を即喪失(国保へ移行)
国民健康保険でも保険料の上限が決まっていますが、社会保険の任意継続でも、保険料の上限が決まっています。
なお、社会保険の協会・組合によって上限が異なります。
例えば、私の場合は『埼玉の協会けんぽ』に加入していましたが、保険料算出の上限は平均報酬月額30万でした。
つまり、それ以上の収入を得ている人は、この上限30万円での保険料が適用されます。
なお、大手企業の組合の場合は、上限がさらに高い可能性があります。
この収入に関する保険料算出の上限金額は、該当の協会・組合に確認しましょう。
ちなみに、1つの目安ですが、平均報酬月額が30万円を超える方は、社会保険の任意継続の方が金銭的メリットが得られる可能性が高いです。
さらに扶養家族の保険料を負担する必要がありません。
- 両親、兄弟
- 配偶者
- お子様
といった、扶養家族となる人が多い場合は、社会保険の任意継続の方が、圧倒的に有利です。
私が住んでいる埼玉県川越市の事例です。
国民健康保険の場合は、1人につき年30600円となります。
当然、人数が増えればその分だけ保険料が増えます。
※月額2550円/人
※2020年2月25日時点
私の場合は、姉が嫁いでおり、父も亡くなったため、実の母のみが世帯人でした。
つまり扶養家族が1人のみのため、国民健康保険への加入における保険料の負担は小さかったです。
しかし、配偶者・両親・子どもと、扶養家族の対象が多い場合は、この追加の保険料が不要となるため、金銭的メリットは大きいと言えるでしょう。
また、保険料を1日でも滞納したら、即日で資格を喪失します。
繰り返しになりますが、社会保険の任意継続期間は、収入によらず同じ金額を2年間納付します。
そのため、長期間収入がなければ、金銭的負担が大きくなります。
長期間にわたって会社に勤める可能性が少ない場合は、国民健康保険の選択を検討したほうが良いでしょう。
なお『国民健康保険の方が安かった』と思ったら、あえて滞納する手もあります。
その結果、社会保険の資格を即日で喪失しますので、強制的に国民健康保険に加入することになります。
ただし、この場合は、国民健康保険への加入手続きの手間が発生し、面倒が生じることは言うまでもありません。
これは1つの最終手段におさめ、まずは国民健康保険と社会保険の任意継続のどちらが適しているか?をしっかり見極めましょう。
まとめ
退職後の国民健康保険
- 前年の所得で保険料が決まる
- 加入期間に期限はない
- 家族を含めた被保険者が多いほど、保険料が高くなる
- 手当金が手薄い
退職後の社会保険の任意継続
- 退職前の1年間の所得で保険料が決まる
- 加入可能な2年間は、保険料が変わらない
- 扶養家族の保険料は不要
退職を決める理由は人それぞれですが、退職後も保険料の納付は避けられません。
しかし、退職時の状況によって、どちらの保険を選んだ方が金銭的に有利かは人によります。
社会保険の任意継続の期限である将来2年程度の生活を予想した上で、後悔のない選択をしましょう。