病気やケガの診察・治療の自己負担額を抑えられる健康保険。
会社を退職したら国民健康保険しか選択肢がないのでしょうか?
実は、会社を退職した後も会社の健康保険に加入し続けられる任意継続という制度があります。
つまり、会社を退職した後は『国民健康保険か任意継続』のどちらかを選ぶことになります。
では、どっちを選べば良いのでしょうか?
本記事では『退職後に国民健康保険と任意継続のどっちを選べば良いのか?』の考え方を紹介します。
ここで紹介する内容は、実際に私が退職した後に取った行動にもとづいており、私のように健康保険に詳しくない人でもわかるように工夫して解説しています。
- 任意継続という制度を知らない
- 任意継続と国民健康保険のどっちが合っているかわからない
という方は、本記事を是非参考にしてください。
健康保険の任意継続とは?
メリット・デメリット
健康保険の任意継続とは、退職後から一定期間内に手続きをすることで、もともと加入していた健康保険に最長2年間は加入し続けることができる制度です。
私が加入していた協会けんぽだと『資格喪失日から20日以内の申請』で任意継続が可能です(※本記事執筆時点)。
では、退職前に加入していた健康保険を継続するメリットとデメリットは何でしょうか?
任意継続のメリット
任意継続は、もともと加入していた健康保険の継続になるので、退職後も以下のメリットを受けられます。
これらは国民健康保険にはない制度です。
- 1人分の保険料で扶養家族全員に保険適用
- 出産手当金などの各種給付金を受け取れる
※詳細は加入していた健康保険の内容を要確認 - 人間ドッグ・保養所などのサービスを利用できる
また、国民健康保険に切り替えるよりも保険料が安くなる可能性があることもメリットの1つです。
国民健康保険では前年の所得で保険料が決まります。
一方、健康保険の任意継続では、退職直前の標準報酬月額を基準に保険料が算定されます。
要は、給料の金額で保険料が決まるということです。
一見すると、給料が高いほど保険料が高くなり続けるように思えますが、実は、その保険料の算出基準となる給料額には上限が設けられています。
つまり、ある一定の給料額を超えると保険料が変わらなくなるということです。
そのため、高所得者ほど保険料が安くなる可能性があります。
1つの目安ですが、退職直前の標準報酬月額が30万円以上であれば、国民健康保険よりも任意継続の方が保険料が安くなります。
具体的な保険料の確認方法は後で説明しますが、高所得者ほど保険料が安くなる可能性があると覚えておきましょう。
なお、任意継続を永遠と続けることはできません。
健康保険の資格喪失日から最長2年間という期限があります。
そのため、再就職で他の健康保険に加入しなければ、2年後に国民健康保険に強制的に加入することになるので注意してください。
任意継続のデメリット
まず、お金が関係する保険料。
実は、会社に勤めている間の健康保険料は会社と個人の2者が折半で負担しています。
例えば、自分が支払っている月々の健康保険料が3万円だとします。
これだけ見ると、毎月支払うべき健康保険料は3万円だと思ってしまいますが、実際は違います。
支払うべき健康保険料は6万円で、自分が支払っていない残りの3万円は会社が負担しているというのが正しい解釈です。
では、退職後に任意継続を選んだら保険料はどうなるのか?
当然退職しているので、今まで会社が負担してくれた保険料も自分で納めることになります。
要は、退職前の2倍の保険料を支払うことになるということです。
先ほど、任意継続のメリットで高所得者ほど保険料が安くなる可能性があると述べました。
つまり逆を言えば、ある一定以上の標準報酬月額がない人では、国民健康保険よりも保険料が高くなってしまうということです。
この損得の分かれ目が標準報酬月額30万円なのですが、最終的には後で説明する保険料の比較で損をしないように注意しましょう。
また、任意継続してから2年間は国民健康保険へ切り替えできないのもデメリットの1つです。
退職後から2年の間で再就職した場合は途中脱退となるので、特に気にすることはありません。
しかし、退職してからの2年の間で新しい就職先が見つからず、途中で国民健康保険に切り替えたくなっても、それはできません。
それだけ脱退条件が厳しいということには注意が必要です。
任意継続のまとめ
退職後も最長2年間は、もともとの会社の健康保険に加入できる制度
メリット
- 1人の保険料で扶養家族全員に保険が適用
- 高所得者ほど保険料が安くなる
- 給付金などの保険サービスが受けられる
デメリット
- 低所得者ほど保険料が高くなる
- 2年間は国民健康保険には切り替えできない
どっち?
国民健康保険と任意継続の選び方
では、国民健康保険と任意継続のどっちを選ぶべきかの考え方を説明していきます。
基本的には、安い保険料の方を選びたくなるものです。
しかし、任意継続のメリット・デメリットを総合して判断しないと、思わぬところで損してしまうので慎重に判断していきましょう。
1:任意継続のメリットの恩恵は?
健康保険の任意継続には、国民健康保険にはない恩恵があります。
次のような人は任意継続を選んだ方が良い可能性があります。
- 扶養家族が多い
- 出産手当金などの給付金制度を使う予定がある
- 保養所や人間ドッグの制度を活用したい
任意継続の1番のメリットは扶養家族制度でしょう。
扶養家族制度を用いれば、自分1人の保険料で親・配偶者・子どもなどの扶養家族全員に保険が適用されます。
私の場合は、扶養家族が高齢の母1人のみだったので国民健康保険を選びましたが、扶養家族の多い人は任意継続を選んだ方が得になる可能性が高くなるでしょう。
また、全員に該当する内容ではありませんが、元々加入していた健康保険が用意している給付金や人間ドッグ・保養所施設等のサービスの利用権なども考えておきたいところです。
自分のライフステージを考えたときに、これらの給付金制度などを活用する可能性が高い場合は任意継続を選んでも良いでしょう。
ただし、一時のサービスのために保険料の高い健康保険を選ぶと損してしまいます。
そこで、次に紹介する流れで、それぞれで掛かる具体的な保険料を確認しましょう。
2:保険料の金額は?
健康保険の任意継続と国民健康保険のそれぞれの保険料は、次の方法で確認できます。
任意継続の保険料の確認
会社から提示された最新の給与明細の健康保険料を確認しましょう。
ここで注意しなければならないのが『会社負担分も自分で支払う必要がある』ということです。
既に説明したとおり、会社員時代の健康保険料は個人と会社が折半して支払っています。
そのため、任意継続では会社員時代の2倍の保険料を支払うので、給与明細の『健康保険料×2』が任意継続での健康保険料になります。
国民健康保険の保険料の確認
私のように保険や税に詳しくない人は、自分で試算するのではなく市区町村役場で確認してもらった方が確実です。
私は自分の収入情報を持って市役所で実際に確認しました。
概算の見積もりであれば1時間も掛かりません。
次の記事で『国民健康保険の保険料の確認方法』を紹介しているので、詳細を知りたい方はこちらを参考にしてください。
なお、国民健康保険の保険料は前年の所得で決まります。
つまり、会社員として毎月収入があったときの所得にもとづいた保険料であるため、一見すると保険料が高く見えるかもしれません。
しかしそれは、退職した年にだけ適用される保険料です。
退職した年の翌年の国民健康保険料は、退職して給料が無くなった分だけ所得が減るので、その分だけ安くなることを覚えておいてください。
3:任意継続のデメリットで損をしないか?
ここまでの内容で、任意継続と国民健康保険のどっちを選んだ方が良いか?という大体の方向性は見えたと思います。
ただしここで気を抜かず、健康保険の任意継続を選んだ場合のデメリットで損をしないかを最終確認しましょう。
任意継続の1番のデメリットは、再就職で会社が加入している健康保険に入らない限り『途中脱退できず、2年間は決まった保険料を支払い続ける』ということです。
例えば、退職後2年間は会社に再就職しないとしましょう。
この場合でも、会社に勤めていたときの2倍の保険料を2年間支払い続けることになります。
無収入の状態で会社員時代と同じ保険料を2年間支払い続けるのは、かなりの経済的負担となるでしょう。
しかし、保険料の負担が厳しいからといって国民健康保険に切り替えることはできません。
一方、国民健康保険に切り替えていればどうなったでしょうか?
確かに退職した年の保険料は高めに映るかもしれません。
それは、国民健康保険の保険料が、毎月給料をもらっていた退職前の年の所得をもとに算定されているからです。
退職したからといって会社に勤めて毎月給料を受け取っていた前年の所得は変わらないため、どうしても保険料が高めに見えてしまいます。
しかし、退職した年の『翌年』の保険料は話が変わります。
当然、退職した年の所得が大きく減るため、退職翌年の保険料はかなり安く抑えられます。
ここが任意継続と大きく異なる点です。
退職した年の保険料だけであれば、先ほどの保険料の比較だけで十分に損得を判断できますが、年をまたぐ視点では全く話が変わってきます。
退職してから比較的短い時間で再就職する方向であれば、任意継続で損することはないでしょう。
一方、私のように持病の療養などを理由に長期間休養する予定であれば、年をまたぐことで保険料が安くなるため、国民健康保険の方が総合的に保険料を安く抑えることができるでしょう。
今後の自分の再就職計画と合わせて、どっちの健康保険が向いているかをしっかり考えましょう。
- 短期間で再就職
⇒任意継続でも損しない可能性大 - 長期間は再就職しない
⇒任意継続だと損する可能性大
なお、自営業・フリーランス・アルバイトの道を歩む場合は、将来的に国民健康保険に加入することになるので、この場合は国民健康保険に切り替えた方が良いと言えるでしょう。
まとめ
- 任意継続の恩恵を受けるか判断
・扶養家族
・給付金などの保険サービス - 保険料を比較
・国民健康保険だと退職翌年の保険料が安くなる点に注意 - 退職から短期間で再就職するか?
・Yes:任意継続でも損しない可能性大
・No:国民健康保険の方が良い可能性大
いかがでしょうか?
本記事では退職に伴う健康保険の選び方を紹介しました。
元々加入していた健康保険を任意継続するのか?
それとも国民健康保険に切り替えるのか?
どっちが自分に向いているかは、短期的な保険料だけでは決まらず、退職後の職の歩み方によっても大きく変わってきます。
自分の退職後の歩み方まで考えて、損をしない選択をしましょう。
なお、国民健康保険の保険料の確認方法は、次の記事を参考にしてください。