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化学は高校の理科4科目の中でも、
- 覚えるべき知識量が多い
- 小数計算などの面倒な計算で時間が掛かりやすい
という特徴があり、安定して高得点を取るのが難しい科目です。
そのため、共通テスト試験の平均点を見ると、化学が理科の中で最も平均点の上下が大きくなっており、受験生の多くが化学で得点が安定しないことに悩んでいることがわかります。
そんな厄介な化学ですが、実は『化学の点数を効率的に上げる学習順序』が存在します。
これは、高校化学の学習内容の特徴と大学入試の出題傾向・配点に着目した攻略法です。
そこで本記事では、私が塾講師として化学を指導してきた経験から『最も効率的に化学の点数を上げるお勧めの学習順序』を1つの勉強法として、その理由と合わせて紹介します。
これは私が高校生時代に実践した方法でもあります。
- 化学で安定して点数が取れる分野がない人
- 大学受験に向けて、何から強化すれば良いのかわからない人
は、本記事の内容を参考にすれば、今まで以上の得点の伸びを実感できるでしょう。
本記事を通じて、戦略的に勉強を進めることの大事さを感じていただければと思います。
なお、後半では、分野別の基本的な学習方針とおすすめの参考書も紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。
高校化学の効率的な学習順序:
分野別攻略
高校化学は『理論化学・無機化学・有機化学』の3つの分野に大きくわけることができます。
この各分野の特徴は後で説明しますが、この3つの分野の最も効率的な学習順序は次の通りです。
- 理論化学
- 有機化学
- 無機化学
無機化学と有機化学の学習順序は学校によって変わります。
しかし、受験勉強で本気で化学の点数を狙うならば、この順番で勉強するのが最も効率的です。
この点について、理由と合わせて次で説明していきます。
化学の点数が効率的に上がる
理由を考える
高校化学では、
- さまざまな物質の性質
- 物質の量の考え方
- 物質の反応の考え方
反応の種類・反応による量の変化
について学習し、その学習内容に応じて理論化学・有機化学・無機化学の3つの分野に分かれます。
理論化学では、さまざまな物質に共通する化学の基本知識や量の計算方法、化学反応について学習します。
そして、有機化学と無機化学で、非常に多くの物質の性質を学んでいきます。
物質はC(炭素)を中心に持つ有機物質とそれ以外の無機物質に分けることができ、この分類に応じて有機化学・無機化学で物質の性質を学習します。
では、この3つの分野の特徴と大学入試の傾向を整理していき、何故この学習順序で化学の点数が効率的に上がるのかを考えていきます。
なお、ところどころの専門用語を知っている必要はなく、そんな内容があるんだ程度で捉えてもらえれば十分です。
理論化学の特徴
分野の特徴
結論:基礎知識&計算のバランスの取れた最重要分野
- 物質を作る原子・結合の性質の基礎知識
物質の性質を学ぶ無機・有機化学の土台 - 物質の量・反応の種類と計算方法
どんな物質にも関係する計算方法や反応の考え方
無機・有機化学の計算の土台 - さまざまな現象(個別テーマが多い)
大学入試の傾向
- 必ず出題され、配点は全体の1/3程度
- 計算量が多く、試験時間切れの原因となる
理論化学は、さまざまな物質に共通する基本的な考え方を学ぶ分野であるため、どの学校でも最初に学習します。
特に最初の化学基礎で学ぶ内容が非常に重要で、化学基礎の内容が理解できないことは、化学全体が理解できなくなることを意味します。
このように、化学の基礎理論を学ぶ重要分野のため、入試では必ず出題され、全体の1/3程度の配点を占めます。
なお、重要分野ではありますが、計算量が多く、試験時間切れを起こす1番の原因となる厄介な面があります。
しかし、いずれにせよ、残りの無機化学・有機化学を学習するための基本知識を学ぶ分野であるため、1番最初に学ばなければならない分野です。
そして計算で時間がかかるため、早めに学習しないと受験に間に合わなくなります。
そのため、学習順序は3つの分野のなかでも1番目になります。
無機化学の特徴
分野の特徴
結論:単純暗記
- 多くの無機物質の性質を学ぶ
覚える量が多い - 暗記内容同士に関連性が少なく、英単語暗記に近い
忘れやすい - 無機化学を知らなくても有機化学は困らない
無機化学を早めに勉強する理由はない
大学入試の傾向
- 配点は全体の1/3~1/4程度で、他よりも配点が少ない傾向がある
- 単純知識と簡単な計算問題
入試では、若干の計算を問われることもありますが、あまり難しい計算は要求されません。
そして、上位大学でない限り、単純な知識問題が大部分です。
これだけ聞くと得点源にできそうです。
しかし、実際は違います。
覚える量がかなり多い割に、覚えること同士の関連性が少ないため、英単語のように、ひたすら暗記する勉強になります。
そして英単語と異なり、普段の化学の勉強に覚えた知識が登場することは少ないです。
つまり、無機化学の勉強をしているときしか、知識の確認ができません。
そのため、触れる機会が少なく、かなり忘れやすくなります。
無機化学は忘れていたら得点できずに終わり、非常に忘れやすい分野のため、安定した得点源にしにくいのが実際です。
そして、この単元を勉強しなくても、残りの有機化学はしっかり勉強できますし、有機化学の方が圧倒的に安定して点数が取れます。
配点の比率も高くないので、無機化学を早めに勉強する理由はありません。
そのため、学習の順番は一番最後の3番目で、中途半端に触れるよりも、最後に集中的に暗記するのがベストです。
有機化学の特徴
分野の特徴
結論:規則性で覚えやすく、出題パターンがほぼ決まっている
- 多くの有機物質の性質を学ぶ
覚える量が多い - 前半『脂肪族~芳香族化合物』と後半『高分子化合物』の2パートに分かれる
- 前半パートは『物質の名前』『性質』『反応の仕方』に規則性(ルール)があるため、暗記量は実は多くない
単純暗記しなければ覚える量は少なく済み、忘れにくい
大学入試の傾向
- 配点は全体の1/3程度
※農学部・薬学部では配点がもう少し高くなる - 出題パターンがほぼ決まっており、対策しやすい
- 特に前半パート『脂肪族~芳香族化合物』の出題頻度がかなり高い
化学の中でも、最も安定した得点源にできるのが有機化学です。
教科書を見ると、非常に多くの物質が登場するため、一見すると無機化学と同じ大変な分野に感じます。
しかし、入試で出題頻度の高い前半パートの『脂肪族~芳香族化合物』は、覚えることにかなりの規則性(ルール)があります。
そのため、単純暗記という安易な勉強さえしなければ、実際に覚えることは少なくて済みます。
そしてこの規則性は有機化学の至るところで登場するので、勉強中の反復性が高く忘れにくいです。
さらに出題パターンもほぼ決まっていることから、最も安定して得点に直結しやすい分野となるため、理論化学で知識の基礎を学んだあとに、すぐに勉強すると、化学の点数が効率的に上がり、点数も安定化します。
なお、有機化学を効率的に得点源とする勉強法を次の記事で紹介しています。
・有機化学の勉強で困っている方
・今後の勉強の参考にしたい方
は、是非参考にしてください。
学習順序のまとめ
理論化学は無機化学・有機化学の基礎となるため、1番最初に勉強します。
しかし、理論化学は試験時間切れを起こしやすく、問題の難易度も幅が広いため、安定した得点に直結しにくい特徴があります。
そこで、理論化学の後に、最も安定して得点できる有機化学を学習すると、試験では有機化学でまとまった点数が取れるようになり、化学の点数が上がります。
この状態を作れれば、残りは理論化学の実力を磨きながら、無機化学をひたすら暗記するというシンプルな作戦になり、効率的に化学の勉強が進みます。
各分野の大まかな学習法と
おすすめの参考書
各分野の細かい勉強法は長くなるため、別記事で紹介します。
ただし、本記事で各分野の学習上の重要なポイントとおすすめの参考書を簡単にまとめておきたいと思います。
これを意識するだけでも、大事なところにしっかり時間が割け、化学の勉強が効率的になります。
理論化学の学習法と参考書
- 化学基礎は全てをしっかり理解
- 発展化学は基礎までに抑え、有機化学に早めに手を出す
理論化学は最も重要な分野ではありますが、他の分野と比べて難易度の幅が広いです。
そして、計算も豊富なため、そもそもの勉強時間が長くなりやすいです。
そのため、下手に応用まで手を出すと勉強が行き詰まり、他の分野の勉強が手薄になる危険性があります。
そこで、まずは化学基礎の理解の徹底を最優先しましょう。
それは、化学基礎を理解していることが、化学全体の勉強が成立するための絶対条件だからです。
そして、化学基礎以降の理論化学の学習は、基礎レベルの習得に押さえ、ドンドン先に進み、有機化学に進みましょう。
理論化学の実力を磨くなら、他の分野で得点力がついた後が良いです。
なお、化学基礎は重要ですが、物質量(mol)でつまづく人が非常に多いです。
この物質量から濃度・化学反応式までをごまかして勉強すると、確実に化学で点数が取れなくなるため、しっかりできるまで理解しつくすことが重要です。
しかし、内容が難しいのも事実です。
だから理解に耐え切れず、ごまかして先に進み、化学を苦手とする人が多くなります。
このように化学基礎の理解に困ったときは、次の『化学基礎をはじめからていねいに』を参考書として利用すると良いでしょう。
図などを用いて、なるべく簡単で丁寧な言葉で解説しているため、初学者の勉強に非常に使いやすいです。
参考書には、公式のようにただ計算方法を教える本が数多く存在します。
しかし、この本は、
- 意味をしっかり解説してくれる
- 意味を理解したうえで計算方法がわかる
- 『くどすぎず丁寧に』という読み手に良いバランスの解説
という点で、他の参考書とは一味違う中身を持っています。
この本に代わる化学基礎の参考書に覚えはありません。
鎌田の化学基礎をはじめからていねいに (東進ブックス 名人の授業)
無機化学の学習法と参考書
- 忘れることを恐れない
- 1度はしっかり覚え、まずは一通りの学習を終える
- 忘れたことに気付いたら、その知識を入れなおせば良い
無機化学は単純暗記が非常に多いので、どうしても忘れることを恐れがちです。
そのため、無機化学の学習の途中で頻繁に復習する受験生が多いです。
しかし、これはかなりキリがない勉強法で、ただただ不安に駆られて時間を浪費して終わります。
そこで、一度覚えたら、どんどん先に進み、無機化学を一通り学習し終えるのが良いです。
そして、問題を通じて忘れていることに気づいたら、その知識だけ入れなおすことを繰り返し、徐々に記憶を定着させるのが良いでしょう。
というのも、問題集で問われる内容ほど重要な知識の傾向が強いです。
そのため、不安という自己判断ではなく、問題で問われている内容を覚えているか?という客観的な確認で復習すれば、重要事項に重点を置いた効率的な学習になります。
なお、教科書でも十分勉強できますが、何が重要なのか?がわかりにくく、覚えようとすることが無駄に増えがちです。
そこで、無機化学の重要事項がコンパクトにまとまっている、『解法の焦点 無機・有機編』がお勧めです。
- 見開きの左ページに重要事項が整理
- 右ページに図を使った補足解説
- 赤シートで重要な内容を隠せる
といった構成で、無駄なく暗記が進められます。
有機化学もこの本が使えます。
なお、問題も掲載されていますが、これは解かなくていいです。
まずは覚えるだけ覚えきってしまうことを最優先にしましょう。
有機化学の学習法と参考書
- 脂肪族~芳香族化合物は、絶対に丸暗記しない
- 命名法・反応による構造の変化の規則性を必ず覚える
- 高分子化合物は単純暗記
有機化学は、入試頻出で出題パターンもほぼ決まっている前半パート『脂肪族~芳香族化合物』を規則性を覚えながら学習することが大事です。
絶対に単純暗記してはいけません。
覚えるべき規則性は、次の3点です。
- 命名法(物質の名前の付け方)
- 反応による構造の変化
- 構造で決まる性質
これさえ押さえておけば、有機化学のいろいろな物質で同じ考えをそのまま使うので、無駄に覚えることを減らせます。
なお、後半パートの『高分子化合物』は単純暗記の要素が強いので、ひたすら覚えましょう。
有機化学も教科書で十分に学べますが、文字数が多く、太字も多いです。
そして、重要な規則性について説明が十分でなかったり、小さな字の補足説明で命名法が説明されているなど、かなり扱いにくいです。
そこで、無機化学と同じ『解法の焦点』を使うと、重要なことをコンパクトにもれなく覚えられます。
その他おすすめ問題集・参考書
次の記事で、化学の基本を徹底するのにおすすめの問題集・参考書を、その特徴から使い方まで紹介しています。
勉強は、使う教材と使い方次第で大きく成果が変わります。
化学が苦手な人ほど、次の記事を参考にしてください。
まとめ
- 学習順序:理論化学→有機化学→無機化学
- 理論化学は化学基礎を徹底し、基本レベルだけ一通り押さえる
- 理論化学の実力を磨くのは、後で良い
- 有機化学は規則性を意識して覚える
- 無機化学は忘れるのを前提に、まずは一通り終え、忘れたら覚えなおすの繰り返し
高校化学は覚えることが多く、計算も厄介なので、戦略的に勉強を進めないと、どの分野も自信がない状態になり、何を勉強すれば良いのかの目標が立てにくくなります。
そのため、関連性と得点の取りやすさを意識した工夫ある学習を実践しましょう。
その結果、確実な得点源が1つ1つ増えていき自信がつくでしょう。
そして、自分が磨くべき目標も定まるでしょう。
本記事を参考に、化学の勉強が順調に進むことを願っています。
なお、学習法について次の記事も紹介していますので、是非参考にしてください。
有機化学の点数を効率的に上げるおすすめ勉強法
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化学の試験で効率的に点数を取る試験の挑み方
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点数を上げる正しい問題集の5つの使い方