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高校の理科4科目(物理・化学・生物・地学)の中でも、物理は最も安定して高得点を取れる科目です。
その理由は、
- 知識の暗記量が少ない
- 問題を解くために必要な考え方がほぼ決まっている
- 学習単元・分野の関連性が強く、似た考え方を繰り返し使う
という高校物理の特徴にあります。
しかし残念ながら、物理を苦手とする人が多いのも事実で、物理を苦手とする人がよく言うことは次の2つです。
- 直感的に理解・実感しにくい
- 最低限の数学の知識が必要で、数式が難しい
これは確かに事実です。
ただし、物理を苦手にする最も根本的な原因は上の2つの特徴ではありません。
『困ったときに中身を理解せず、単純にやり方を覚えてしまう』という学習の取り組み姿勢にあります。
物理は覚えることが少ない一方で、似た考え方を多くの単元で使うため、理解をごまかした学習の取り組みでは成績は伸びません。
目の前のことを1つずつしっかり理解しながら、分野・単元の学習順序を工夫すべきです。
これを意識すれば、
- 理解した知識の定着が飛躍的に向上し、忘れにくくなる
- 模試の点数が上がり、やる気と自信の向上につながる
といった気持ちのよい体験ができるでしょう。
本記事では『高校物理の点数を効率的に上げる、おすすめの学習順序』を1つの勉強法として紹介します。
良い参考書・問題集を選ぶよりも、まず知っておくべき重要な内容でしょう。
実際に私が塾講師として物理を指導してきた結果、継続的にコツコツ勉強する生徒は約1年で全範囲の基礎学習を終えることができています。
戦略的な高校物理の学習順序を知れば、今まで以上に物理の勉強がはかどり、点数が上がることを実感できますので、是非参考にしてください。
結論:
高校物理のおすすめ学習順序
高校物理は大きく分けて5つの分野に分かれています。
教科書で確認できますが、『力学・熱力学・電磁気学・波動・原子物理学』の5つです。
そして、この5つの分野に対して最も効率的な学習順序は次のとおりです。
- 力学
- 電磁気学
- 熱力学
- 波動
- 原子物理学
効率的な学習順序で
物理の点数が上がる理由
何故先ほどの学習順序で効率的に物理の点数が上がるのか?
その理由を『分野・単元の関連性』と『入試の出題傾向』の2点から説明します。
各分野の学習内容の特徴
なるべく専門用語は使わず、細かすぎない説明にしますので、太字のキーワードだけ意識してください。
もし知らない専門用語があれば、『そんなものがあるんだ』で済ませてください。
ここでの説明で、専門用語の意味は重要ではありません。
学習の順番に従って紹介するので、前の分野の説明にも登場したキーワードがあるか?に着目してください。
もし、前の分野に登場したキーワードが他の分野にも登場したら、それだけ関連性が強いということです。
力学
- 物体の運動予測
- さまざまな力が物体の運動に与える影響
- 物体が持つエネルギー・運動量
力学は物体の運動と、運動の源である力に関するさまざまな知識を学習します。
物体の運動予測は『物体がいつ・どこに・どんな速度で運動しているのか』を数式で予測することです。
そして物体が運動する原因となる力の種類や考え方を学習します。
さらに、物体が運動するとエネルギーを持ちます。
簡単に言うと、速い車ほどぶつかると被害が大きくなるという考え方です(運動エネルギー)。
この『運動・力・エネルギー』の3点が力学のメインテーマで、最も物理らしい学習分野と言えるでしょう。
電磁気学
- 直流・交流回路の特性
- 電気に働く力・電気が持つエネルギー
- 電気が電場・磁場から受ける力と運動
電磁気学では、家電製品で馴染みのある電気のさまざまな性質を学びます。
まず電気回路(直流・交流)を流れる電流や電圧、抵抗などの関係を学びます。
これは、電磁気学のみの考え方です。
しかし学習が進むと、電気に働く力、電気が持つエネルギー、そして電気の運動といった力学の考え方が頻繁に登場します。
当然、人間や車とは異なり、考える対象が電気なので新しい公式などは学びますが、その力やエネルギー・運動の考え方自体は力学と全く同じです。
例え話です。
車によってスイッチの位置や使い方は変わっても、車の運転方法自体は同じで、道路の走り方やルールも同じです。
そのため、車の運転免許を持っていれば、車が変わっても道路を同じように運転できます。
逆に、車の運転の仕方がわからない・運転免許がない人は、他の車でも運転はできません。
これを物理の学習に置き換えると、力学で運動・力・エネルギーの免許を持っていなければ、電磁気学でつまづくということです。
逆に、運動・力・エネルギーの免許を持っていれば、力学と同じ考え方で電磁気も攻略できるということです。
そしてこの考えは、次の熱力学でも全く同じです。
熱力学
- 熱というエネルギーの考え方
- 気体の性質(ボイル・シャルルの法則、状態方程式)
- 気体の運動と気体が持つエネルギー
水とお湯のような温度に関係する熱というエネルギーの考え方を学びます。
この熱のエネルギーの基本的な考え方は熱力学の序盤ですぐに終わり、その後は、身近に存在する気体の運動やエネルギーについて考えていきます。
身近に存在する蒸気機関や車のエンジンの動力を考える基礎です。
既に気体の運動・エネルギーというキーワードが登場していることから、熱力学でも力学の知識が必要になります。
つまり、電磁気学と同様に、力学で運動・エネルギーをしっかり理解していなければつまづく、理解できていればスムーズに学習が進む、ということです。
波動
- 音や光といった波に関するさまざまな性質を学ぶ
- 楽器で特定の音が強く鳴る仕組み(共鳴・干渉)
- 光が曲がる性質(反射・屈折・レンズ)
- 音の聞こえ方の変化(ドップラー効果)
波動ではこのようなことを学習しますが、今まで頻繁に登場したキーワードがまったくありません。
つまり、高校物理の波動は、他の分野とかなり独立した学習分野で、極論、どのタイミングで学習を始めても問題ないということです。
当然、専門的に波動を理解するには力学の知識は必要ですが、高校レベルでは力学の知識は不要と言ってよいでしょう。
原子物理学
- 原子・電子といった微粒子の運動・エネルギー
- 波の1つであるX線の性質
- 原子力発電に関係する核崩壊・核融合のメカニズムとエネルギー
原子物理学は高校物理の最後で学ぶ分野で、専門的な近代物理学の基礎を学ぶ内容です。
力学・電磁気学・波動の3つの分野の知識が同時に必要となる、かなり総合的な学習分野と言えるでしょう。
各分野の関連性のまとめ
- 力学が最も基本的な学習分野
- 力学の知識を使って電磁気学・熱力学を学ぶ
- 波動は独立性の高い分野で、いつ学習しても問題ない
- 原子物理学は、力学・電磁気学・波動の3つの分野の知識が必須
- 関連性の強い『力学・電磁気学・熱力学』を先に学習することがポイント
物理の各分野で関連性のあり・なしがかなり分かれることがわかりましたよね?
力学が最も基本的な学習分野である理由は、やはり電磁気学・熱力学を学ぶうえでの基礎ということにあるでしょう。
この学習分野の関連性を意識しないで学習すると、いかに非効率な学習になるか容易に想像できると思います。
入試での出題傾向
高校物理の5つの学習分野のうち、特に他の分野と関連性の薄い波動はいつ学習しても問題ないと説明しました。
しかし、波動の学習の優先順位は上から4番目と低いです。
この理由は入試問題における出題頻度にあります。
入試での出題頻度の傾向
- 力学・電磁気学は大問として必ず出題され、全体の2/3程度の得点を占める
- 熱力学・波動は大問にならないことがある
- 原子物理学を出題しない大学は多い
または、出題しても小問でわずかな点数のみ
入試問題は1つのテーマで問題を複数出題する大問形式と、1問1答のような簡単な問題を色々な分野から出題する小問集合形式の2つで構成されます。
※小問集合を出さない大学もある
力学と電磁気学を大問として出題しない大学はほぼありません。
大問は全体の得点に対する配点も高く、大問を3題出題する大学が多いので、力学と電磁気学だけで約2/3(66%)の配点を占めることになります。
そして残った大問1つでは熱力学か波動から出題され、残りは小問集合だけで少ない配点というケースが多いです。
つまり熱力学・波動の配点比率は低いということです。
さらに原子物理学は出題されないことも珍しくありません。
この現状から考えると、
- 関連性が高く、配点も高い力学と電磁気学を最優先
- 次に関連性の高い熱力学
- いつやってもよい波動
- 時間が無かったら捨ててもよい原子物理学
という優先順位で高校物理の学習を進めた方が物理の点数は上がりやすくなり、受験に有利なことは明らかでしょう。
効率的な学習順序
によって得られる効果
- 圧倒的な定着率
- 模試や大学の過去問でまとまった点数が取れる
- 自信がつき、残りの分野に余裕を持って取り組める
人間は忘れる生き物なので、新しい考え方を学んでも、しばらく使わないと忘れていまい、復習に余計な時間がかかります。
しかし、高校物理を効率的な学習順序で進めると、比較的短い期間で同じ考え方を使う頻度が飛躍的に上がります。
その結果、忘れる前に学んだ考え方が頭に残り、知識の定着率が圧倒的に上がります。
そして、高校物理の中でも優先度の高い力学と電磁気学は模試や入試でも頻出のため、模試や大学の過去問を解いたときに、まとまった得点を取りやすくなります。
これは物理に対して自信を与えてくれ、残りの分野も気持ちにゆとりを持って学習に臨むことができるようになります。
一番最悪なのは、どの分野もまともに身につかず、あれこれと復習する状況です。
この状況に陥ると、自信のある分野がないため、やらなければならないことが増えて焦り、1つ1つの学習が雑になるといった負の連鎖を引き起こします。
何かしら自信の持てる分野があれば、残りの分野に時間を注力しやすくなりますよね?
ただ頑張るだけでなく、その頑張りをもっと実感できるような学習の工夫を取り入れることが、周りと差をつける重要なポイントです。
そのうえで物理の学習順序を考えることは非常に効果的です。
おすすめの問題集と勉強法
最後に物理の基礎を学ぶのにおすすめな問題集を2つ紹介します。
セミナー物理基礎・物理
2023年度用 最新版 セミナー物理基礎+物理 問題集本体別冊解答編 新課程
※〇年度用と毎年出版されますが、毎年ほぼ同じ内容なので年度が変わっても問題ありません
メリット
- 問題の難易度がはっきり区別されている
- 基本問題では、1つの問題に対して使う知識が少ない
- 知識と考え方を確認しやすい
- 問題数が少し多めなので反復演習しやすい
デメリット
- 解説がシンプルなので読んでもわからない場合がある
学校で使う高校も多い『セミナー物理基礎・物理』です。
問題は基礎から発展・総合まであり、発展問題・総合問題では有名大学の過去問も取り上げているため、基礎から応用まで1冊で対応できます。
ただし、基本問題と発展問題では、問題の難易度に大きな差があり、初めて学ぶ内容で発展問題まで手を出そうとすると行き詰る人は多いと思います。
そのため『基本例題→基本問題→(発展例題)』だけにとどめ、一通りの学習を終えたら、別の問題集に移る方が良いでしょう。
※物理が苦手な人は発展例題もやらなくて良い
この点だけ注意すれば、基本問題は1つ1つの知識を正しく理解して使えているのか?を確認できる良い問題で構成されているので、非常に自己チェックしやすい問題集と言えます。
また問題数も少し多めなので、知識の反復演習にも向いています。
ただし、解説がシンプルなので『もっと細かく説明してほしい』と思う人・物理がかなり苦手という人には向かないかもしれません。
逆に『くどい解説は苦手』という人には相性が良いです。
2023年度用 最新版 セミナー物理基礎+物理 問題集本体別冊解答編 新課程
秘伝の物理 問題集
秘伝の物理問題集[力学・熱・波動・電磁気・原子] (ひとりで学べる)
- 物理全分野で計189問と少ない問題数
- 掲載問題がほぼ基本問題で構成され基礎に徹底
- 基礎の中でも、問題の難易度を5段階に分類していて、解くべき問題を選びやすい
- 徹底した丁寧な解説で、くどすぎない
物理が苦手な人にかなり向いている問題集です。
まず物理全分野で189問しかないので、一通りの基礎を固めるには時間効率が良いです。
1日2問やれば3ヵ月で終わる量です。
そのうえ、全てが基本問題レベルの難易度で、くどすぎない程度に徹底した解説がされているので、問題を解くために必要な考え方を1つ1つ確認しやすいです。
図もきれいなので、とてもわかりやすいです。
なお問題レベルは基礎のなかでも1~5までの5段階で分類されているので、自分でレベルを調整しやすいです。
まずは難易度3までの基礎を徹底した後、他の内容を学習しながら、少しずつ難易度4~5に手を出し、忘れ防止と思考力の強化を図る、といった工夫をしやすいです。
塾講師として物理の問題集を数多く見てきましたが、物理が苦手な人にこれ以上向いている問題集はないのでは?と正直思っています。
秘伝の物理問題集[力学・熱・波動・電磁気・原子] (ひとりで学べる)
まとめ
- 力学→電磁気学→熱力学→波動→原子物理学の順序が効率的
- 関連性と出題頻度・配点の高い分野を優先し、自信をつける
- 余裕がなければ原子物理学は捨てても良い
スポーツにしろ、芸術にしろ、何も考えずに練習をしても上達しません。
むしろ、変なクセがついて足を引っ張ることもあります。
目的意識と戦略を持って学習に臨まなければ、思い通りの結果は生まれません。
逆に、目的意識と戦略をしっかり持てば、努力に見合った分の結果が返ってきます。
高校物理の学習で悩んでいる方は、この記事を参考に、自分の学習する内容にメリハリをつけて戦略的に勉強していきましょう。
なお、理科に学習関係で次の記事も紹介しています。
是非参考にしてください。
(1)が解けない物理初級者が物理の点数を上げるための参考書・問題集
物理の中級者~上級者向けのおすすめ問題集
高校化学の点数を効率的に上げるおすすめ勉強法 -学習順序の工夫-
点数を上げるために今すぐ実践すべき問題集の正しい5つの使い方