最近では、近親者のみで執り行う小さなお葬式『家族葬』が増えています。
近親者のみが参列するため、喪主の挨拶で何を話すべきか、逆に迷ってしまうこともあるでしょう。
本記事では、実際に私が家族葬の喪主として挨拶したときの経験に基づき、
- 家族葬での喪主挨拶のタイミング
- 挨拶の禁句(忌み言葉)と代替表現
- 挨拶を考えるときのポイントと構成
- 挨拶の例文
を紹介します。
これから家族葬の喪主として挨拶をする方は、1つの事例として是非参考にしてみてください。
家族葬での喪主の挨拶のタイミング
- 葬儀業者と打ち合わせで決定
- 通夜振る舞い・精進落としの挨拶のみも可
※通夜振る舞い・精進落とし:お通夜・告別式後のお食事
一般的な葬儀では、主に次のタイミングで喪主が挨拶します。
- 通夜・告別式の最後
- 通夜振る舞い・精進落としの最初と最後
一方、家族葬では、参列者が近親者のみなので、全員で葬儀・精進落とし・納骨までの全てを参列するのが一般的です。
そのため、挨拶をしようにも挨拶の相手が毎回全員同じで、何度も挨拶するのがおかしくなります。
そこで、家族葬では、葬儀の節目で挨拶はせず、精進落としなどのキリの良いタイミングだけで挨拶をします。
私の場合は、精進落としの最初だけ挨拶をしました。
このあたりのタイミングや回数は、葬儀の進行を担当する葬儀業者と事前に打ち合わせをして決めましょう。
喪主挨拶の禁句(忌み言葉)と代替表現
冠婚葬祭の挨拶にはマナーがつきもので、喪主の挨拶にも避けるべき表現(禁句・忌み言葉)が存在します。
具体的には次のようなものです。
代表例と合わせて、代わりに使える代替表現も合わせて見てみましょう。
繰り返しの意味を持つ表現
- 忌み言葉:ますます・重ねて・再び、など
- 代替表現:深く・厚く、など
※繰り返し表現を使わない強調表現で代用する
死を直接的に表現する言葉
- 忌み言葉:死ぬ・死亡・急死、など
- 代替表現:息を引き取る・逝去・突然の出来事、など
これらの禁句・忌み言葉を意識して挨拶文を考えましょう。
なお、葬儀の挨拶では次の表現も良く使われるので、こちらも参考にしてみてください。
この言葉を使うだけでも、挨拶文が引き締まります。
葬儀の挨拶でよく使う言葉
- ご厚誼(こうぎ)・ご親交
※親しく付き合うこと - ご厚情(こうじょう)・ご支援
※相手の親切心 - 賜る(たまわる)
※いただく・頂戴する
挨拶を考えるときのポイントと構成
初心者が挨拶文を考えやすくするためのポイントと代表的な挨拶構成を紹介します。
これを基本にして挨拶文を考えれば、徐々に自分でしっくりくる挨拶を作り上げることができるでしょう。
ポイント1:
挨拶は短くて良い
- 1~5分程度の長さで挨拶を考える
- シンプルな構成で考え、後で肉付けする
気張って多くを話す必要はありません。
あまりにダラダラとした長い挨拶は締まりがなく、参列者の心に届きにくいです。
そして何より、挨拶の文面が考えにくくなるでしょう。
そのため、1~5分程度の長さを目安に、まず必要最低限の挨拶の文面を考えて、挨拶の基本骨格を作ってしまいましょう。
そのうえで、この部分の内容を付け足したいと思ったら、その都度考えていけば問題ありません。
ポイント2:
参列者の方へのお礼とお願いは定型句
お礼
- 参列してくれたことへのお礼
- 故人との生前でのお付き合いへのお礼
お願い
- 今後も変わらぬお付き合いへのお願い
これらは喪主の挨拶での決まり文句(定型句)と言えるでしょう。
これがあるだけで、より一層、喪主の挨拶らしい文面を作ることができます。
具体的な表現は、後の例文を参考にしてください。
ポイント3:
タイミングの良いところで『故人も喜んでいる』
これも定型句で、よく使われる言葉です。
参列者へのお礼の部分など、適宜、都合の良い場所に『故人も喜んでいる』という表現を入れましょう。
この表現をもって『葬儀が良い形になったこと』を伝えましょう。
挨拶の構成
基本的に、次の5部構成で挨拶を考えると文面が作りやすくなります。
- 喪主の自己紹介
- 参列者へのお礼
- 故人に関する話
- 変わらぬお付き合い・ご厚誼のお願い
- まとめ
※必要に応じてお食事への誘導
では、実際の私の挨拶の例文も含めて、次の章で各パートを具体的に紹介していきます。
家族葬での挨拶の例文
ここで紹介する文章は、あくまでも私の事例なので、ご自身の場合ならどのような文章になるかを考えながら見てください。
1:自己紹介
- 故人との続柄を伝える
- 名前を述べる
- 『親族を代表して挨拶』と言う
例文
〇〇(故人名)の長男の△△です。
親族を代表して、ご挨拶申し上げます。
2:参列・生前でのお付き合いへのお礼を述べる
- 参列に関するお礼
- 生前中のお付き合いへのお礼
この順番が一番話しやすいでしょう。
なお、雨などの天気が悪い場合には『お足元の悪い中』などの表現を加えることもありますが、無理に話さなくても良いと思います。
例文
本日はお忙しい中、ご参列いただき、誠にありがとうございます。
また、父の生前中におきましては、皆様から多大なるご厚誼賜りましたこと、深く御礼申し上げます。
本日、このようにお世話になった方々にお集まりいただき、父もさぞかし喜んでいるものと思います。
3:故人に関する話
- 故人が亡くなった経緯
※触れなくても良い - 故人の人柄や思い出など
※ポジティブな印象でまとめる - 定型句も入れることを考える
※故人は幸せだった・故人を尊敬する、など
喪主の挨拶の大部分は定型句ですが、この部分だけは、故人の人柄や遺族の想いなどを述べるため、人によって話す内容が大きく変わるでしょう
まず、故人が亡くなった経緯ですが、これは必ずしも話す必要はありません。
あえて話すことを避ける場合もあるでしょう。
ただし、私の場合は『何で亡くなってしまったのか?』と弔問で聞かれることが多かったので、挨拶の場で簡単に話すことにしました。
次に、故人の人柄や遺族の想いなどですが、具体的には次のような話になるでしょう。
- 故人の人柄
※生真面目・明るい・責任感が強い、など - 故人の思い出
※思い出に残るエピソード
※日常の過ごし方
※遺族として尊敬できる面、など
ここが挨拶を考えるうえで一番悩むところですが、ポジティブな内容であれば何でも良いです。
その上で、
- 故人が幸せだった
- 遺族として故人を尊敬する
といった言葉につなげると、全体的に話がまとまるでしょう。
例文
ご存じの方も多いとは思いますが、父はパーキンソン病という難病に長らく患わっておりましたが、つい先日までは自分で元気に動くことができておりました。
しかし、2月1日に様態が急変し入院するも、翌2月2日の午前9時52分、急性腎不全、急性循環器不全にて息を引き取りました。70歳でした。
本日を迎えるまでに、多くの方に弔問にお越しいただきました。
〇ちゃん、△ちゃんと、息子の私では普段聞きなれない呼び名で父に声をかけていただき、涙を流していただき、生前中の父の話を伺うことで、父がこれまでどれだけ多くの方にお世話になり、愛されていたのかを知り、父は幸せ者だと思うのと同時に、これまでご親交いただいた皆様には感謝の気持ちでいっぱいになりました。
4:今後も変わらぬお付き合いをお願いする
ここでは『ご厚誼・ご支援』などの表現で、今後も変わらぬお付き合いの継続をお願いしましょう。
ここも定型句です。
例文
父が亡くなり、〇〇家も母と私を残すのみとなりましたが、皆さまには今までと変わらぬお付き合い、ご厚誼賜りますよう、お願い申し上げます。
5:まとめ
- 以上が挨拶ということを伝える
- 最後にお礼
- お食事の場では、食事への誘導を付け加える
まず、これで挨拶が終わります、ということを簡単に宣言しましょう。
そして、参列者の方に改めてお礼を伝えましょう。
また、精進落としなどのお食事の開始時には、食事への誘導の言葉を添えましょう。
例文
簡単ではございますが、これをもちまして、挨拶の言葉と代えさせていただきます。
本日は誠にありがとうございました(お辞儀)。
※以下、お食事の場で追加する言葉
さて、ささやかではございますが、お料理(お膳)をご用意いたしました。
お時間の許す限り、父の話を交えながら、ゆっくりとおくつろぎください。
まとめ
いかがでしょうか?
勢いで喪主の挨拶を考えても、なかなか文面がまとまりにくいと思います。
シンプルな挨拶の基本骨格と、忌み言葉を避けた定型句を意識することで、挨拶の文面はかなり考えやすくなるでしょう。
本記事を参考に、ご自身に合った挨拶の文面が出来上がることを願っています。
なお、喪主に関係する次の記事も紹介しています。
気になる方は、是非参考にしてみてください。
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