突発性難聴は、発症後から約1ヵ月で聴力の回復が期待できなくなる恐ろしい病気です。
そのため、突発性難聴では、発症後の早期治療が極めて重要と言われています。
また、完治の見込みは1/3と低く、症状が重症であるほど完治の可能性は低くなると言われています。
私は突発性難聴の重症を患いました。
聴覚を完全に失うだけでなく、重症ということから、通常の歩行も満足にできない平衡感覚となり、一時は普段の日常生活を満足に送ることができませんでした。
また、重症ということで、完治の見込みが極めて薄い状態でした。
今回、突発性難聴の重症となった私の3カ月にわたる治療期間における回復記録をご紹介します。
- 重症患者がどこまで回復したのか?
- 聴力は治療開始からどのくらいで回復が見られるのか?
突発性難聴の回復は時間勝負のため、なかなか聴力が回復せず焦り、不安になる方は多いと思います。
私もその一人でした。
たった1人の実体験ですが、突発性難聴の回復事例として参考にしてください。
私の突発性難聴の症状(重症)
最初に私の突発性難聴の重症がどの程度のものかを具体的に紹介します。
後の治療履歴で紹介しますが、発症から3日後に地元の耳鼻科で重症のため入院を勧められる程度の症状です。
なお、私が突発性難聴となったのは右耳です。
右耳の平均聴力
- 約90dB
発症後の副症状
- 回転性のめまいで自立歩行できず救急車で搬送
- 耳鳴り・耳閉感が強い
- 平衡感覚が乏しく、常に左右にふらつき歩行
まず肝心の聴力は何も聞こえないレベルの聴力90dBで、この時点で重症です。
そして、突発性難聴の主症状である難聴に加え、副症状のめまい・ふらつきが強く発生しました。
突発性難聴では、この副症状が併発するほど重症度が高く、完治の見込みが薄くなり、特に発症後の回転性のめまいは、その典型と言われています。
それほど典型的な重症度でした。
なお、突発性難聴の具体的な症状を次の記事で詳しく紹介しているので参考にしてみてください。
突発性難聴の具体的な症状の紹介
https://www.tm-life-agent.com/entry/hearing-loss-action
治療期間と治療方法
発症から早期の治療が重要な突発性難聴。
発症からの日数別に、具体的な治療期間と治療方法を整理します。
治療期間と大まかな治療方法
まず、私の計3カ月にわたる大まかな治療方法を発症からの日数別で紹介します。
次の2点が治療期間と大まかな治療方法の特徴なので、この点に着目してみてください。
- 発症から約1ヵ月までの間だけステロイドを処方
- 治療期間は最大3カ月
発症後 日数 |
治療方法 | 治療場所 |
---|---|---|
~4日 | 内服薬 ステロイドあり |
自宅療養 |
5日 ~12日 |
内服薬 ステロイド点滴 |
入院 |
13日 ~23日 約1ヵ月 |
内服薬 ステロイド減量 |
自宅療養 月1で聴力検査 と診察 |
24日 ~96日 約2カ月 |
内服薬 ステロイドなし |
自宅療養 月1で聴力検査 と診察 |
治療期間
- 最大で3カ月間が目安
突発性難聴で聴力の回復が期待できる期間は発症後1ヵ月と説明しました。
一般的にそのように言われており、この1ヵ月間が最も回復が期待できます。
ただし、入院後の医師が説明するには、神経細胞学的に発症後3カ月間は薬による回復が見込める期間ということらしいです。
これが、私が発症後3カ月間にわたって治療を続けた理由です。
しかし発症から3カ月を過ぎると、薬による回復は期待できず、この時点で治療終了となるのが一般的な流れです。
大まかな治療方法
- ステロイドの処方は発症から1ヵ月まで
軽症・中等度の症状の場合は、地元の耳鼻科で薬の服用による経過観察が主となり、体への負担と行動能力に問題がない範囲で活動可能です。
そのため、完全な自宅療養の必要はないようですが、過労やストレスが突発性難聴の原因と言われているので、完治を目指すなら無理に仕事などをせず、自宅療養することが好ましいと思われます。
一方、私のように重症の場合は、突発性難聴の回復に有効と言われるステロイドの点滴が必要なため、一時的に入院し、その後は完全な自宅療養(絶対安静)で薬を服用し続け、発症から1ヵ月単位で聴力検査と診察を行いました。
突発性難聴の入院は1週間が一般的です。
突発性難聴による入院の詳細については、次の記事で紹介してますので、参考にしてみてください。
突発性難聴による入院の詳細(費用・生活など)
https://www.tm-life-agent.com/entry/hospitalization-hearing-loss
なお、突発性難聴の回復に有効な薬であるステロイドは、点滴も含めて発症から1ヵ月間のみの処方となり、徐々に減量していきます。
私の場合は、発症から1ヵ月目以降はステロイドを一切服用しませんでした。
そのため、発症から1ヵ月目以降の薬は、この後紹介する『神経細胞の回復促進と血流促進の薬』のみとなります。
具体的な薬の詳細
突発性難聴で服用する薬は大体決まっており、ここで紹介する4種類の薬が一般的です。
そこで、実際に私が服用した薬と効能を簡単に紹介します。
プレドニン錠
プレドニン錠は、突発性難聴の回復を目的としたメインの薬でステロイドです。
ステロイドとは、副腎皮質ホルモンの1つで、突発性難聴の回復効果があると言われるものです。
主な効果は、さまざまな炎症やアレルギー症状、免疫反応を抑える働きがあります。
ただし、副作用も多く、感染症にかかりやすいというデメリットもあります。
なお入院中は、より効果を高めるため、服用ではなく点滴で直接体内に取り込みます。
メコバラミン錠
メコバラミン錠は、神経障害を改善し、しびれや痛み・麻痺などの症状を改善する薬です。
神経細胞の回復を促す目的です。
アデホスコーワ顆粒
血流を促進し、神経細胞の回復を促進する目的です。
また、めまいにも効果がある薬です。
レバミピド錠
胃の粘膜を保護し、他の薬の服用により胃がダメージを受けるのを防ぐ目的です。
治療期間と聴力の回復履歴
では、重症の突発性難聴がどの程度回復したのかを、発症後からの時系列でイベントごとに紹介していきます。
なお、私がどの程度まで回復したのか?の結論を先に述べておきます。
私の突発性難聴の重症の回復結果
- 中低音域は正常レベルまで回復
- 高音域は中等度の難聴
残念ながら完治できませんでした。
中低音域は正常レベルまで回復したとありますが、高音域が聞き取れません。
そのため、色々な音域が混ざる生活音の中で、中途半端に音が聞こえ、まともに右耳で会話を聞き取るのが正直困難な状況です。
しかし、聴力が回復した部分もあるので、いつぐらいから回復したのか?などは参考になると思うので、その点について触れていきたいと思います。
聴力検査の見方について
実際の回復結果を聴力検査のグラフでお見せするので、簡単に聴力検査の結果の見方を解説しておきます。
なお、ここでお見せする聴力検査の結果は、入院初日の結果です。
聴力検査の結果の見方
- ✕・〇が鼓膜を介する気導聴力
- ✕が正常な左耳・〇が異常な右耳
- [・]のカッコが鼓膜を介さない骨導聴力
- [ が異常な右耳
- [ の下に↓がある場合は測定限界を超えており、測定不能ということ
- 右にいくほど高周波数(高音域)
- 500~2000Hzが生活音域
聴力には気導聴力と骨導聴力の2つがあります。
気導聴力は鼓膜を介して空気の振動で音を聞く聴力です。
一方の骨導聴力は、鼓膜を介さずに骨の振動で音を聞く聴力で、耳を閉じて自分の声を聞くときの音のようなものです。
これを意識して次の結果を見てください。
まず右耳の気導聴力の〇が軒並み聴力の悪い下側にあるのがわかります。
そして骨導聴力を表す [ の下には全て↓がついており、測定限界を超えて測定不能だとわかります。
測定不能とは、検査装置で計測できる聴力を超えており、単純に聞こえていないという判定になります。
これが突発性難聴の重症患者の聴力検査の結果で、いかに聴力が悪くなっているかがわかると思います。
回復記録
では実際の回復記録にもとづき、ポイントを整理していきます。
ざっくりと発症後から1ヵ月ごとに整理していきます。
発症後から約1ヵ月
発症後 日数 |
状況 | 回復・変化 |
---|---|---|
~12日 | 入院 | 聴力変化なし 発症9日目で めまい・ふらつきが 少し和らぐ |
14日 | 自宅療養 | テレビの音に 反応し始める |
23日 | 聴力検査 | 中低音域が 中等度に回復 |
まずステロイド点滴を行った入院期間で聴力の変化は一切ありませんでした。
これに対して、完治に対して絶望感を抱きました。
ただし医師の先生が言うには、ステロイドの効果が出てくるには少し時間がかかるということでした。
実際に自覚できる変化を感じたのは、退院した発症後14日目です。
今まで外の音に全く反応しなかった右耳が、低音域だけ反応し始めたのです。
残念ながら言語として認識できる反応はありませんでしたが、テレビの音のリズムと合わせて、ブー・ブーといった機械音で知覚できる変化です。
つまり、ステロイドを点滴・服用し始めて14日目で聴力の回復傾向が見られたということです。
そのため、治療を開始して即座に聴力が回復することは、あまり期待しないほうが良いでしょう。
またこの頃には、ゆっくり歩けば多少ふらつきながらも、外を出歩くことに問題がない程度まで歩行能力は改善していました。
めまいやふらつきは、片耳の聴力を突然失った変化から起こるので、ある程度時間が経てば状況は改善するのかと思います。
さて、回復の自覚症状があってから約1週間後(発症から23日)の聴力検査では、次のような変化がありました。
入院直後と発症後23日の結果を並べます。
まず125~1000Hzの音域で大きな聴力の回復が見られているのがわかると思います。
気導聴力の〇は大幅に上に移動し、骨導聴力も測定不能の↓が無くなり、測定可能なレベルまで改善しています。
これは、聴力検査前に私が自覚した変化と一致しています。
ただし、2000Hz以上の高音域では何も変化が見られませんでした。
低音域が回復するのか?
高音域が回復するのか?
医師が言うには、どの音域が回復するのか?逆に言うと、どの音域で障害が残るのかは人によってかなり変わるらしいです。
私の場合は高音域が障害として残るタイプだったようです。
発症から1ヵ月~2ヵ月
一般的に言われる突発性難聴の回復リミットの1ヵ月を超えた後の1ヵ月間は、神経細胞の回復と血流促進を促す薬の服用のみでした。
その1ヵ月間の自宅療養による変化がこちらです。
正直、大きな変化はありませんでした。
あえて言うと、2000Hzの高音域の骨導聴力が測定不能から測定可能レベルに改善したことです。
この結果からみると、多少改善は見られるものの、突発性難聴発症後1ヵ月を過ぎると聴力の回復がほとんど見られなくなる、ということがわかります。
発症から2ヵ月~3ヵ月
一応、聴力検査の結果を前回と比較して並べますが、もう変化が見られないことがわかると思います。
このことからも、これ以降の大きな改善が期待できないことがわかりました。
もともと医師が言っていた神経細胞の回復期限である3ヵ月も迎えたことで、この時点で治療終了となりました。
やはり、突発性難聴は発症後から1ヵ月が最も回復が期待できる期間ということです。
今は、この体に慣れ、少しずつ行動できる幅を広げ、体に合った生き方を模索しています。
まとめ
- 突発性難聴の発症から1ヵ月以内が最も回復が見られる
- 発症後の1ヵ月間を安静にすることが大事
- 重症では完治しないことを体感
- 人によって回復する音域が異なる
結局、完治するという理想的な結果をお伝えすることはできませんでしたが、これは私の体験という1つの事実です。
ただし、絶対に完治しないということではありません。
少なくとも、発症後から1ヵ月以内が最も回復が期待できる期間なので、この期間を如何に大事に過ごすか?が極めて重要だと思います。
軽症や中等度の方は、支障がない範囲でお仕事などをされるかもしれません。
しかし、突発性難聴の回復リミットは長くて3ヵ月、大幅な改善が見られるのは1ヵ月と極めて短いです。
永遠と続く療養ではないため、元の生活を取り戻すためにも、少なくとも発症後の1ヵ月間はしっかり療養されることをお勧めします。
やり切らないで後遺症が残ると後悔すると思います。
結果は勝手についてきますので、まずは療養を第一優先するようにしましょう。
また、突発性難聴に関する書籍も出ているので、情報収集し、悔いのない療養を目指してください。
突発性難聴 完全攻略マニュアル―耳鳴・難聴・めまいは治ります!
この本の内容や感想は次の記事で紹介しています。
https://www.tm-life-agent.com/entry/hearing-loss-book1
なお、仕事を休んでいる間の給与保障(傷病手当金)について、次の記事で紹介しています。
こちらの記事も参考にしてみてください。
給与が減ったときの保障(傷病手当金)
https://www.tm-life-agent.com/entry/injury-allowance-application