志望校の大学入試を攻略するうえで欠かせない過去問。
過去問は、志望校の大学入試で実際に出題された問題がまとまっているので、問題の難易度・出題傾向・試験時間の忙しさなど、本番の得点力に直結する重要な要素を学ぶことができます。
しかし、実際に出題された入試問題ということに妄信し、
- 過去問を解きまくる
- 過去問で間違えた問題を復習・解き方を覚える
といった手法で、点数が伸びると勘違いしている方が多くいます。
そこで、少し考えてみてください。
もしこれだけで点数が上がるのであれば、誰も大学入試で困りませんよね?
しかし、実際は違います。
多くの方が、志望校に合格するために試行錯誤しています。
つまり、何も考えずに過去問ばかりやっていても、試験に合格できないということです。
そして、実際の大学入試で合否を決めるのは、得点力という名の実力です。
本記事の対象者
- 大学入試の過去問の使い方がわからない方
- 過去問を解き続けても、点数が上がらない方
本記事では、私が講師として大学受験を指導してきた中で、最終的に辿り着いた過去問の効果的な使い方を紹介します。
過去問を正しく使えれば、本番の得点力に直結する効果的な学習を実践できます。
本記事を参考にして、徐々に点数が伸びるような、効果的かつ戦略的な過去問演習を実践してください。
効果的な大学入試の過去問の使い方
解く前に意識すべきこと
- 満点を狙わない
- 合格最低点を目指す時間の使い方を考える
・1:得点できる問題を確実に取ることを第一優先
・2:解けない問題は飛ばして、無駄に時間を使わない
解くときに意識すべきこと
- 試験時間が足りず、十分に手が出せなかった問題は、時間を延長して解く
採点後に意識すべきこと
- 間違えた問題は見直す
※未習分野はスルー
※解説を見ても明らかにわからない問題もスルー - 得点できたであろう問題に注目
※純粋に考え方を間違えていたが、正解できそうだった問題
※試験時間が足りていれば手が出ていたであろう問題 - わからないで、無駄に時間を使ってしまった問題はなかった?を確認
- 得点源になりそうな分野を確認
※今後の学習時間を多くする - 最低限の得点に抑える分野を確認
※今後の学習時間を少なくする
これらを意識することで、1回の過去問演習から得られる収穫は格段に増えるでしょう。
では、その理由をこれから解説していきます。
過去問を解く前に意識すべきこと
- 満点を狙わない
- 合格最低点を目指す時間の使い方を考える
・1:得点できる問題を確実に取ることを第一優先
・2:解けない問題は飛ばして、無駄に時間を使わない
入試本番で最も意識しなければならないことですが、これを意識しない人が非常に多いです。
恐らく『試験 = 満点を目指す』という定期テストに対する考え方の延長で、大学入試を考えてしまっているのでしょう。
大学入試で満点を取る必要は一切ありません。
合格に必要な点数は『合格最低点』で、それを超えてさえすれば何点でも合格です。
合格最低点を非公表にしている大学もありますが、概ね『6~8割の点数』で合格できます。
そのため、良い点数を取るのではなく、合格最低点を超える解き方を意識すべきです。
そうすると自然と、次のような試験時間の使い方を考えたくなりませんか?
- 自分の得意分野で点数を稼ぐ
- 高難易度・苦手分野の問題は後回し
※最悪、まったく手が出せなくてもOK
入試には試験時間があり、好きなだけ考えてよいわけではありません。
そのため『限られた試験時間を、得点できる問題にどれだけ使えたか?』が得点に直結します。
試験開始と同時に前から順に解き始め、わからない問題に出会って無駄に悩み時間を浪費する。
その結果、試験後半の得点できた問題に手が出せず後悔する。
このような話はよくあることで、1回は経験したことがあるのではないでしょうか?
入試は前から解きなさいと誰も指示していません。
合格最低点を取るために、
- 取るべき問題に、しっかり時間を使えたか?
- 取れない問題に無駄な時間を掛けなかったか?
といった戦略意識を最初に持つだけで点数は変わってくるでしょう。
なお、この目標点数の考え方を非常にわかりやすく説明しているのが次の本です。
単純な努力だけではなく、努力を最大限活かす戦略的な入試攻略を提唱することで有名な『和田秀樹』さんの本です。
私は受験勉強の目標を明確にするために、1週間勉強を止めて、この本に没頭しました。
目標とする大学は東大になっていますが、
- 科目別の得点配分
- 得意・不得意の科目を分けた学習の戦略
など、一見に値します。
戦略なき勉強は非効率です。
より効率的な受験勉強を望む方は、是非この本を一読してみてください。
解くときに意識すべきこと
学習済み分野
- 試験時間が足りず、十分に手が出せなかった問題は、時間を延長して解く
- 延長時間は試験時間の半分程度が目安
入試本番では、試験時間が終わった時点で終了です。
しかし、過去問演習では時間延長を必ず考えましょう。
それは、得点できたはずなのに時間が足りなかったという『戦略面での失点』を確認するためです。
そして『実際に解く』という行動から、あと少しで解けそうだという、学力面での惜しい失点を確認するためです。
- 解けたはずの問題 = 得点に直結する問題
・その問題に手が出せなかったのは時間の使い方の問題
・その問題を解く前に、無駄に時間を使った問題はないか? - もう少しで解けそうだった問題
・もう少し実力を上げれば得点できただろう問題 - どうすれば、もう少し点数が伸びたか?
これらを振り返ることで、限られた試験時間・普段の受験勉強の有効活用法を考えることができるでしょう。
得点できる問題に、十分に手が出なくて失点することは悔しいですよね?
解けない問題に使った無駄な時間を、解けそうな問題に使えば良いのです。
この戦略的な見直しだけで点数が伸びます。
具体的な戦略として、次のようなことを考えましょう。
- 大問1つあたりに何分使うのか
- 何分悩んだら飛ばして次の問題に移るのか
ここまで具体的に戦略を立てながら過去問を解くと、徐々に自分の実力を無駄なく発揮した入試の解き方に近づけていけるでしょう。
そして、自分が勉強してきた分野で、あと少しで得点に辿り着きそうだった問題も見逃せません。
大学入試の問題の難易度は、志望校で決まります。
もう少しの努力で手が届きそうな分野は、あと少しの努力で得点につながる分野です。
普段の学習時間をその分野に多めに割り当てることで、得点力が上がるでしょう。
未習分野
- 未習分野の問題は解かない
※そもそも解けないから - 高配点ならば優先的に勉強する目標とする
※勉強することで大きく得点upする
過去問を解く時期によっては、まだ学習していないから解けない問題があると思います。
その場合、学習していない分野に試験時間を割く理由がないので、解かないという選択をしましょう。
解くために必要な知識・経験がないので、解けないのが当たり前です。
解けない前提の問題に試験時間を使うのであれば、学習済みの分野の問題に使いましょう。
そのほうが、勉強した分野の問題にどれだけ手が出せたか?で、目標に対する今の自分の実力を知ることができます。
全然解けないのであれば、勉強時間を増やさなければ目標に到達できません。
最悪、志望校変更も真剣に考えなければなりません。
また、未習分野の配点が高い場合は、今後の受験勉強で優先的に時間を掛けなければならない分野として目標設定しましょう。
まだ未開拓の美味しい分野があるのであれば、その分野に勉強時間を掛けるほど得点力に直結します。
配点の低い分野に時間をかけるのは無駄です。
- 既に学習済みの分野を強化すべきなのか?
- 既習分野よりも、未習分野に時間を掛けるべきなのか?
今の自分の実力と、未習分野を勉強することで得られる得点の可能性。
これらを天秤にかけて、どうするのが最も得点につながるのか?を考え、戦略的な学習目標を立てましょう。
採点後に意識すべきこと
- 間違えた問題は見直す
※未習分野はスルー
※解説を見ても明らかにわからない問題もスルー - 得点できたであろう問題に注目
※純粋に考え方を間違えていたが、正解できそうだった問題
※試験時間が足りていれば手が出ていたであろう問題 - わからないで、無駄に時間を使ってしまった問題はなかった?を確認
- 得点源になりそうな分野を確認
※今後の学習時間を多くする - 最低限の得点に抑える分野を確認
※今後の学習時間を少なくする
ここまでくると、今までに考えてきたことの総仕上げです。
考えるべきは次の2点です。
- 戦略面
・より多くの点数を取る行動が取れていたか? - 目標面
・どの分野の点数が伸びやすいか?
既に、試験時間の使い方(戦略面)は十分に説明しました。
そこで、ここでは『目標面』について掘り下げたいと思います。
人には得意不得意があります。
得意分野ほど勉強すれば点数が伸びますし、不得意分野を伸ばすには、より多くの時間が必要です。
もし不得意分野の配点が低いのであれば、その問題を解くために多くの時間を不得意分野の勉強に割く必要はないでしょう。
まったくの0点とまではいきませんが、先に得点できそうな美味しい分野に時間を割くべきです。
それが片付いてから不得意分野の点数を上げれば良いだけです。
例えば、得意分野で目標点数よりも10点多く取るとします。
これならば、不得意分野で得点すべきは、目標点数よりも10点低くすることができます。
このような『天秤的目標設定』を意識してみては如何でしょうか?
入試本番までの時間は限られているので、より多くの点数が、より少ない時間で実現できる分野に勉強時間を割きましょう。
この判断のために、採点後にしっかり振り返りしましょう。
どのような問題か?ではありません。
どの分野を攻略するのか?です。
より広い目線で学習目標を定めると、どの分野に時間を掛けるべきかが明確になり、ブレの少ない受験勉強計画を作ることができます。
なお、この過去問の復習のやり方について次の記事で細かく解説しています。
気になる方は、是非参考にしてみてください。
まとめ
解く前に意識すべきこと
- 満点を狙わない
- 合格最低点を目指す時間の使い方を考える
解くときに意識すべきこと
- 試験時間が足りず、十分に手が出せなかった問題は、時間を延長して解く
採点後に意識すべきこと
- 間違えた問題は見直す
- 得点できたであろう問題に注目
- わからないで、無駄に時間を使ってしまった問題はなかった?を確認
- 得点源になりそうな分野を確認
- 最低限の得点に抑える分野を確認
大学入試は万能さを求めていません。
あくまでも、合格に必要な点数を取れるか?の点取り合戦です。
- 試験時間の使い方
- 得点の伸びしろのある分野への学習時間の注力
- 苦手分野に割く勉強時間の削減
これらの戦略が、志望校の合格をより近づけてくれます。
せっかく時間を使う過去問演習だからこそ、今回の過去問演習で何を学んだのか?
単純な得点だけではなく、解答の〇✕以外に目を向けるようにしましょう。
なお『過去問』や『科目別の勉強』について次の記事を紹介しています。
こちらの記事も、是非参考にしてください。
過去問をいつから解き始めるのか?
高校化学の勉強法
高校物理の学習法
問題集の効果的な使い方